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営業人のための表情・しぐさ分析入門

Vol.7 顧客満足度を表情から計測する

こんにちは。特定非営利活動法人日本交渉協会特別顧問の清水建二です。本日は、顧客満足度を表情から計測することを試みた研究について紹介します。

何らかの商品を購入したり、サービスを受けたりすると、商品の満足度や接客態度についてアンケートを求められることがあります。「面倒だな」と思いつつも店員さんのお願いを断りにくく、アンケートに応じます。10項目程度から成るアンケート。評価は大変不満から大変満足まで7段階あります。余程訴えたいことがない限り、「大変満足」か「満足」にパパっとチェックします。少しくらい不満があっても「満足」にチェックを入れたりします。店員さんに気を遣っているということもあれば、「不満」の理由を自由回答で求められるのが面倒、ということもあります。

こんなふうに思いながらアンケートに答えているのは、私だけでしょうか。

アンケートにどの程度顧客の本音が反映されているのだろうか?
この疑問に答えてくれる研究があります。

アメリカ中西部に住むアメリカ人女性119名を対象に、彼女たちが美容品・衛生用品・家事用品・健康用品を使っているときの表情が計測されました。研究の結果、次のことがわかりました。

①嫌悪、愛想笑い、怒り、軽蔑が最も多い頻度で生じ、幸福が最も少ない頻度で生じた。
②計測されたほとんど全ての表情は部分的な表情であった。
③計測された愛想笑いの1/5では、悲しみ、怒り、恐怖が各々、同時に生じた。
④言葉と表情が4割ほど一致していなかった。

ネガティブな表情が大部分を占め、かつそれらの表情は部分的な表情として表れていたということがわかります。部分的な表情は、本当の感情が表情に出ないように抑制された、あるいは/かつ、感情反応が弱いことを意味します。愛想笑いはネガティブな表情を隠すのに利用されていることが推測できます。また、言葉と表情が一致していないというのは、例えば、言葉では10回肯定的な発言をしていても、表情では4回否定的な反応を示した、ということを意味します。

このことから、商品に対する本音は、ストレートに表現されるとは限らず、微妙な表情として表れる、ということがわかります。

企業・個々人問わず、日々、営業や交渉経験を重ねる中で、お客様の言葉や感想を明示・非明示問わずデータ化し、将来の営業・交渉、商品開発、マーケティングに活かそうと試行錯誤しています。しかし、肝心のそのデータの中にお客様の本音が反映されていなければ、意味がありません。本研究知見から、お客様の表情を始めとした非言語メッセージを考慮した新しいデータ収集の方法や観察視点が必要だと言えるでしょう。

実際、私が、企業内研究や調査に協力させて頂く中で、本研究のような知見が再現されることもあれば、実験参加者に商品・サービスの質の違いを評価してもらう際、言葉で表現することが難しくても、表情の違いとして表れる様子を多々、目にすることが出来ます。

こうした現象は研究室の中だけで起こっているわけではありません。私が参加する商談や交渉の中でも、言葉に表現されている以上の感情や本音が様々に表情に表れています。

研究者の方にとっても、営業・交渉・接客の現場に立つ実務者の方にとっても、表情は、お客様のニーズを把握する上でとても重要な情報源だと言えるでしょう。

ここでお知らせがございます。2021年9月より「交渉アナリスト表情分析プラクティショナー養成オンデマンドコース」がリリースされます。教材作成及び講師は私、清水建二です。営業成績抜群の営業人の方にとっては、ご自身の暗黙知・名人芸を見える化させることを通じて、部下育成などに活用することが出来ます。営業が苦手という営業人の方にとっては、どんな表情がどんな意味を持ち、どんな声掛けをすれば、お客様とのコミュニケーションが円滑に流れるかということを理論・実践面から学ぶことが出来ます。認定テストに合格すれば、資格認定もされます。この機会に、是非、お客様の本音を表情から観察する知識とスキルを獲得して下さい。


参考文献
Matsumoto, D., Hwang, H. S., Harrington, N., Olsen, R., & King, M. (2011). Facial behaviors and emotional reactions in consumer research. Acta de Investigacion Psicologica (Psychological Research Records), 1(3), 441-453
清水建二『微表情を見抜く技術』飛鳥新社 2016年


清水建二 プロフィール

特定非営利活動法人日本交渉協会特別顧問
株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役
防衛省研修講師


1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動、犯罪捜査協力等を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組(「この差って何ですか?」「チコちゃんに叱られる」「偉人たちの健康診断」など)で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16・19」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』イースト・プレス、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』フォレスト出版、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』飛鳥新社、共著に『同頻溝通:把話說進對方的心坎裡』今周刊がある。

【著作】
『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』飛鳥新社
『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』フォレスト出版
『ビジネスに効く 表情のつくり方』イースト・プレス
『同頻溝通:把話說進對方的心坎裡』今周刊(共著)


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