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営業人のための表情・しぐさ分析入門

Vol.8 自身の態度が相手の感情に与える影響

こんにちは。特定非営利活動法人日本交渉協会特別顧問の清水建二です。これまで、交渉相手の表情やボディーランゲージの読みとり方やアプローチ法について紹介してきました。本日は、相手ではなく、自分の表情やボディーランゲ―ジに焦点を当てたいと思います。自身の態度が相手の感情に与える影響とはどのようなものでしょうか。

「部下に意見を問うと、いつも強張った表情をするんですよね」

「部下に意見を問うと多くの部下を抱える方々から、しばし頂く相談です。こうした方々は、自信にあふれ、仕事もバリバリこなし、とても才能のある方々ばかりです。勢いがある、迫力がある、と形容するのが適当かも知れません。しかし、こうした勢いが裏目に出てしまうことがあります。

主従関係含め、立場や地位の違いと感情表現には、次に示す傾向があることがわかっています。

地位の区別があまり明確でない文化圏(例えば、アメリカ)に比べ、地位の区別が明確な文化圏、例えば、ここ日本では、地位の低い者が高い者に対して、ネガティブな感情を向けることは憚られ、ポジティブな感情(繕ったものであったとしても)を向けることが推奨されます。上位の者にネガティブな感情を向けることは、主従関係の調和を乱す恐れがあるからです。しかし、ポジティブな感情は、敬意を示すことや、歓心を買うことにつながります。

一方、地位の高い者が低い者に対して、ネガティブな感情を向けることはタブーではありません。自分自身の地位の高さを誇示するのに役立つからです。

こうした傾向に無自覚ですと、上司・部下関係に限らず、取引関係、売買関係等のコミュニケーションにおいて、相手の立場が自分より弱いと判断されるとき、相手に不快やあざけりなどの感情を抱く度に、ネガティブな表情やボディーランゲージ、ときに言葉の端々となって生じてしまうでしょう。こうしたネガティブな態度は、たとえ、あからさまでなくても、相手に伝わってしまうものです。

これでは、相互に尊敬を抱く人間関係やwin-win交渉を目指すことは出来ません。

相手への敬意を保つことを心がける。心がけを変える。もちろん、重要です。しかし、心を変えていくことは、一朝一夕には出来ません。そこで、形から入るのも一つの手です。次のような態度をコミュニケーション相手に向けていないか、チェックしてみて下さい。そして、こうした態度をとっている自分に気づいたなら、少しずつ少しずつ、態度を整えていくのです。

相手への敬意を欠く態度。それは、怒り表情、軽蔑表情、相手への注視、クローズド姿勢、リーダー姿勢、不必要に相手に近づく行為の6つです。それぞれの態度が相手に与える影響を説明します。

怒り表情
コミュニケーションにおいて、イラつきを感じ、それを表情や態度に出してしまうとします。怒り表情を見たり、怒り感情を感じた相手は恐怖を抱きます。恐怖を抱いた相手は、恐怖感情に支配されてしまい、冷静な状態を保つことが難しくなってしまいます。その場の恐怖を解消するために、相手は、出来ない約束をしてしまう、あなたの気持ちがよくなるウソを口走ってしまう、そんな可能性があります。相手にウソをつかせているのは、怒り表情のあなたかも知れません。

軽蔑表情
軽蔑表情の場合、軽蔑されていると感じた相手は、自尊心を守るために殻に閉じこもってしまったり、表面上同意していても、心の距離は離れていく可能性があります。

相手への注視
相手への注視、特に極度なアイコンタクトは、相手に不安や不快感を与えます。心の中が見透かされているような感じがしてしまいます。

クローズド姿勢
クローズド姿勢とは、腕組みや手を組む姿勢です。クローズド姿勢は相手に「私はあなたの意見を聞きません」「自分の中に閉じこもっています」という印象を与えてしまいます。こうした姿勢がクセになっている方もいらっしゃると思いますが、相手に心を開いてもらいたい、本音を話してもらいたい、そんなときは、クローズド姿勢を解いて下さい。

リーダー姿勢&接近行為
リーダー姿勢とは、自分の面積を広くとる姿勢のことを言います。例えば、手を腰にあて肘を横に突き出すアームアキンボー、両手を頭に組む姿勢などがあります。この姿勢を他者とのコミュニケーション中にとると、相手の空間を侵犯することになります。この姿勢は相手に恐怖や不快感を与えることがあります。これと関連するのが、親密な関係でもないのに必要以上に相手に近づく行為です。これも相手に恐怖や不快感を与えます。

心を変えることで形が変わる。形を変えることで心が変わる。心と態度のセルフ・モニタリングを日々、意識し、win-winコミュニケーションの実現を目指して下さい。

相手を観察し、相手の気持ちを考え、自分の態度を顧みる。「交渉アナリスト表情分析プラクティショナー養成オンデマンドコース」がオススメです。2021年9月にリリースされました。教材作成及び講師は私、清水建二です。営業・商談だけでなく、面接、接客などにおけるコミュニケーションを広く交渉事ととらえ、目の前の相手の表情をどう読み、どう解釈し、win-winを実現するにはどうアプローチすべきか、自分の態度をどう整えるか。科学理論とビジネス実践両面から考え、実践して頂くコースです。認定試験に合格すれば、資格も発行されます。体系的にしっかりと学ぶことが出来ます。


参考文献
清水建二『ビジネスに効く 表情のつくり方』イースト・プレス 2017年
ディビッド・マツモト、工藤力『日本人の感情世界―ミステリアスな文化の謎を解く』誠信書房 1996年

清水建二 プロフィール

特定非営利活動法人日本交渉協会特別顧問
株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役
防衛省研修講師


1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動、犯罪捜査協力等を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組(「この差って何ですか?」「チコちゃんに叱られる」「偉人たちの健康診断」など)で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16・19」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』イースト・プレス、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』フォレスト出版、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』飛鳥新社、共著に『同頻溝通:把話說進對方的心坎裡』今周刊がある。

【著作】
『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』飛鳥新社
『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』フォレスト出版
『ビジネスに効く 表情のつくり方』イースト・プレス
『同頻溝通:把話說進對方的心坎裡』今周刊(共著)


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