営業人のための表情・しぐさ分析入門―言外の想いや意図を察する技術vol.9

こんにちは。特定非営利活動法人日本交渉協会特別顧問の清水建二です。前回、自身の態度が相手の感情に与える影響について特集しました。具体的には、地位の異なる関係における振舞い方、相手への敬意が低いとやってしまいがちな表情や姿勢について注意点を解説しました。本日も、前回に引き続き、注意したい言動のお話です。

相手に良い印象を与える笑顔。緊張を和らげる冗談。この二つはコミュニケーションを円滑にする万能薬のように思えます。しかし笑顔と冗談さえも、使い方には注意が必要です。使い方を間違えるとコミュニケーションを円滑にするどころか、相手を苛立たせたり、真面目に対応させる気を失わせたりする可能性があります。
私が経験したコンサル事例に次のようなものがあります。笑顔の接客が事態を悪化させてしまったという出来事です。ある店員さんのサービス内容の説明が上手ではなく、お客様が苦言を呈し始めました。イライラし始めたお客様の顔に怒りの表情が浮かび始めます。店員さんはそのお客様のイライラに気づくのですが、焦りつつも、笑顔を保ち、丁寧に説明を続けます。そこでお客様から一喝。

「こっちがイライラしているのにヘラヘラするな!」

感情には受け皿があります。例えば、目の前の相手が怒り表情をしていたら、みなさんはどう感じますか?「怖い」と感じるのが普通だと思います。そうです。ですので、接客の際、笑顔を基本としつつも、お客様の怒り表情を観たら恐怖表情(もちろん過度にならない程度にですが)で対応すると、お客様は無意識に「自分の感情が受け止められた」と感じるのです。自身の怒りが受け止められたと感じたお客様は、その怒りが低減するのです。
こんな事例もあります。

「ヘラヘラしている営業マンは商品が売れない」。

これは私の知る「できる」営業マンの言葉です。理由を聞くと「売れない営業マンほど、常に『笑顔の接客』をしています。どんなときもニコニコ、ニコニコ。真面目に商品説明をしなくてはいけないときでも、笑顔で商品を説明しています。これは、ややもすれば、ヘラヘラ。ヘラヘラでは真剣な態度を伝えることができません。商品の良い所を真剣に伝えることができないのです」ということでした。なるほどです。
科学的な話をしますと、本心からの笑顔というのは、5秒以上続くことはまれです。接客スタッフや営業マンの顔に5秒以上笑顔が続くことは仕事の性質上、ある程度は仕方がないことです。愛想笑いは必須なスキルです。しかし、それが状況に合わなかったり、度を過ぎたりすると、相手に悪印象を与えてしまいます。
続いて就職面接の事例。就職面接において、応募者は面接官に良い印象を与えられるよう基本的には笑顔です。しかし、職種に応じてそれが仇となる場合があります。某報道局のアナウンサーを選別する面接では、笑顔を見せる応募者より真面目な表情をしている応募者の方が合格する確率が高いことを、ある調査が見出しています。真面目な報道をするには真面目な表情が良い、ということのようです。
次に、冗談についてです。緊張と弛緩。日常のコミュニケーションにおいて、緊張と弛緩が適度にあることは大切です。相手を弛緩させる手段の一つが、冗談です。日常のコミュニケーションにおいて冗談を言えば、その場を和ますことに一役買うでしょう。真面目な話や深刻な話の最中でも、絶妙なタイミングで冗談を入れることで、緊張が和らぎ、気持ちが楽になったり、力が抜けることで新たなアイディアが生まれたりすることがあります。
しかし、時に、所かまわず冗談を言っている人がいます。常に弛緩です。そうした人は、残念ながら「ふざけている人」に映ります。真面目な話ができない人に思われます。特にこちらが理解できない冗談を言う人には本当に参ってしまいます。弛緩どころか苛立ちを覚えて来るかも知れません。冗談ばかり言っていたある人に対して、こんな一言が放たれた瞬間に居合わせたことがあります。

「あなたの話は、何が本当で何がウソかわからない」。

もちろん冗談自体が悪いわけではありません。それをいつ、誰に対して、どんな冗談を言うかを考えなくてはいけない、ということです。思いつきで自分勝手な冗談は、場を和ませるどころか、相手に悪い印象を与え兼ねません。
笑顔と冗談。一見するとコミュニケーションの万能薬に思えます。しかし、何にでも副作用というものがあります。どんな言動をすれば相手の気持ちを受け止められるのか、場面に即した言動とはどんなものか、相手の立場に立って臨機応変に対応することが大切です。

様々な交渉場面で、相手の感情を表情から読み、自身の感情を表情で適切に伝える。そんなトレーニングを集中的にされたい方に、おススメのコースがあります。「交渉アナリスト表情分析プラクティショナー養成オンデマンドコース」です。オンデマンド配信ですので、配信期間中でしたら、いつでも、どこでも、何度でも、ご自身のペースに合わせて学んで頂くことが出来ます。教材作成及び講師は私、清水建二です。認定試験に合格すれば、資格も発行されます。今までに見過ごしていた表情という情報の大切さを、きっと、体感できると思います。


参考文献
清水建二『ビジネスに効く 表情のつくり方』イースト・プレス 2017年


清水建二 プロフィール

特定非営利活動法人日本交渉協会特別顧問
株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役
防衛省研修講師


1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動、犯罪捜査協力等を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組(「この差って何ですか?」「チコちゃんに叱られる」「偉人たちの健康診断」など)で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16・19」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』イースト・プレス、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』フォレスト出版、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』飛鳥新社、共著に『同頻溝通:把話說進對方的心坎裡』今周刊がある。

【著作】
『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』飛鳥新社
『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』フォレスト出版
『ビジネスに効く 表情のつくり方』イースト・プレス
『同頻溝通:把話說進對方的心坎裡』今周刊(共著)


本誌掲載の写真 ・ 記事 ・ 図版を無断で転写 ・ 複写することを禁じます。

関連記事