Vol.16 売上総利益率が低い原因は何でしょうか?
営業人のための一問一答で学ぶ!財務知識vol.16
第16回 売上総利益率が低い原因は何でしょうか?
このコーナーでは、営業人の方にぜひ知っていただきたい会計・財務の基礎知識を、質問形式で解説します。皆さんが部下や後輩から同じような質問をされたとき、ちゃんと回答できるか、自問自答しながらお読みください。このコーナーを毎月コツコツと読み続けていただけば、気づいたときには会計・財務に強い営業人になっているはずです。
Q.「上司が、うちの会社は売上総利益率が低い、とぼやいていました。売上総利益率が低い原因はどこにあるのでしょうか?」
損益計算書(P/L)の売上総利益を売上高で割った比率を売上総利益率と言います。以下の損益計算書では、売上総利益率は30%(=売上総利益300円÷売上高1,000円)です。
<損益計算書>
売上高 1,000円
売上原価 700円
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売上総利益 300円
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売上総利益は「仕入値にどれだけ多くの利益をのせて売っているか」を示しています。そのため、一般的に付加価値が高い製品ほど売上総利益率は高くなります。医薬品業界では売上総利益率は70%前後、精密機器業界も50%前後と高くなっています。
このように説明すると、薬や精密機械のように手の凝った製品は売上総利益率が高く、手の凝っていない製品は売上総利益率が低いと思えますが、必ずしもそうとは限りません。
例えば、車と洋服では、どちらが付加価値が高いと思いますか?自動車のほうが付加価値は高そうに思えますが、実はトヨタ自動車の売上総利益率は15%~20%程度なのに対し、ユニクロを運営するファーストリテイリングは50%程度もあるのです。ユニクロは、製造する洋服の種類を減らし、大量生産により製品原価を下げているのです。
一方、付加価値の高い製品を扱っていても、商社のように右から左にさばくビジネスモデルでは薄利多売になります。三菱商事などの大手商社でも売上総利益率は12%程度です。
このように考えると、売上総利益率は、付加価値の大きさ、大量生産品がどうか、ビジネスモデル、ライバル企業との価格競争など、様々な要因によって決まるものと言えそうです。
ところで、そもそも皆さんは自分の会社の売上総利益率を知っていますか?販売価格は知っているが原価を知らないという営業社員の方は結構多いのです。是非、販売価格だけでなく、売上総利益率も意識してみてください。自分の会社のビジネスや製品の特徴が見えてくるかもしれません。
望月 明彦 プロフィール
トランスエージェント講師
特定非営利活動法人 日本交渉協会 常務理事
■公認会計士 ・ 交渉アナリスト
≪役職等≫
・ 望月公認会計士事務所 代表 (現任)
・ 日本交渉協会 常務理事 (現任)
・ ディップ株式会社監査役 (東証1部上場)(現任)
・ アイビーシー株式会社監査役(東証1部上場)(現任)
・ 日本公認会計士協会東京会 研修委員会 副委員長(2010~2014)
・ 経済産業省コンテンツファイナンス研究会 委員(2002~2003)
≪略 歴≫
早稲田大学政治経済学部卒。
監査法人トーマツを経て、慶応義塾大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)修了。
その後、上場企業の経営企画部長として資本政策の立案・実施、合弁会社の設立、各種M&Aなどを手掛ける。
さらに、アーンストアンドヤングの日本法人にて上場企業同士の経営統合のアドバイザー等を務める。
2010年より望月公認会計士事務所代表。日本交渉協会常務理事。