営業人のための一問一答で学ぶ!財務知識vol.13

第13回「返品」ではなく「仕入」で処理しろって…。これが循環取引?

このコーナーでは、営業人の方にぜひ知っていただきたい会計・財務の基礎知識を、質問形式で解説します。皆さんが部下や後輩から同じような質問をされたとき、ちゃんと回答できるか、自問自答しながらお読みください。このコーナーを毎月コツコツと読み続けていただけば、気づいたときには会計・財務に強い営業人になっているはずです。

Q.「先輩から、今回の返品は仕入で処理してくれ、と言われたんですが、どういうことですか?もしかしたら、これ循環取引じゃないでしょうか?」

販売した商品が返品されたとき、これを仕入で処理したらどうなると思いますか?本来減るべき売上が減らないで済むわけですから、やってはいけない処理であり、粉飾です。
しかし、返品を仕入で処理したら、「得意先から商品を仕入れるなんておかしいぞ」とすぐにばれます。そこで、悪い会社は3社以上で商品をぐるぐると循環させるのです。
登場する企業はA社、B社、C社の3社とします。まず、A社が在庫として持っている商品10万円をB社に11万円で販売します。これでA社に1万円の利益です。次に、B社は11万円で仕入れたこの商品をC社に12万円で販売します。これでB社に1万円の利益です。最後にC社が12万円で仕入れたこの商品を、A社に13万円で販売します。これでC社にも1万円の利益です。
こうして、A社の10万円の在庫が、B社とC社をぐるっと回ることで、3社とも1万円ずつの利益を得ました。さて、この合計3万円の利益はどこから生まれたかわかりますか?この3万円は、A社の在庫10万円が13万円に膨れることで生まれたのです。
このように考えると、ひたすら3社間で商品をぐるぐると売りまわしていれば、永遠に利益が生み出されそうに思えます。これが循環取引です。まるで錬金術です。
ところが悪いことは続かないもので、やがてどこかの企業が破綻してしまい、連鎖的に倒産が起こったり、またはどこかの企業で循環取引が発覚し、関係していた企業の担当者がお縄になったりという結末を迎えます。
こんなふうに循環取引が発覚したら、関係者はみな社会人としての信頼を失い、その後の転職もままならず、まともな生活が送れなくなってしまいます。絶対に循環取引などに加担してはいけません。
不誠実な営業人の間で商品を循環させたところで、やがて悪で膨れ上がった水風船は爆発します。営業人の皆さんには、是非、誠実な仲間をつくり、その仲間で誠実な取引を繰り返し、信頼関係を膨らませていただきたいものです。


望月 明彦 プロフィール

トランスエージェント講師
特定非営利活動法人 日本交渉協会 常務理事

■公認会計士 ・ 交渉アナリスト

≪役職等≫
・ 望月公認会計士事務所 代表 (現任)
・ 日本交渉協会 常務理事 (現任)
・ ディップ株式会社監査役 (東証1部上場)(現任)
・ アイビーシー株式会社監査役(東証1部上場)(現任)
・ 日本公認会計士協会東京会 研修委員会 副委員長(2010~2014)
・ 経済産業省コンテンツファイナンス研究会 委員(2002~2003)

≪略 歴≫
早稲田大学政治経済学部卒。
監査法人トーマツを経て、慶応義塾大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)修了。
その後、上場企業の経営企画部長として資本政策の立案・実施、合弁会社の設立、各種M&Aなどを手掛ける。
さらに、アーンストアンドヤングの日本法人にて上場企業同士の経営統合のアドバイザー等を務める。
2010年より望月公認会計士事務所代表。日本交渉協会常務理事。


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